転ばぬ先のリフォーム
○月×日 転ばぬ先のリフォーム
30年ほど前、定年退職した父が実家をプチリフォームした。
家の中のいたるところに手すりをつけたのだ。玄関から廊下、階段、トイレ、風呂場、寝室……考えつくあらゆる場所が手すりだらけになった。当時まだ30代だった私は「ちょっとやりすぎじゃないの……」とあきれていた。
だって、インテリアにそぐわないパイプがあちこちの壁に走って、完全に美観を損なっていたから。だけど、それには訳があった。
定年間際の父が、同僚との宴会で酔っぱらい、店の廊下で転倒して足を骨折。そのまま入院し、しばらく痛い思いをしたらしいのだ。
そんなことがあって、父は自分の体力の衰えを痛感し、先のことも考えて家中に転倒防止策を施したというわけだ。
そういう私も、今や父の年齢に近づき、このところめっきり足腰が弱くなった。
若い頃にはなんでもなかった段差につまづくし、玄関で靴をはくときもバランスを崩したり、体を曲げるのも辛くなった。この歳になってはじめて父の気持ちがよく分かる。
やっぱ手すりは重要だ!
だけどリフォームするなら、インテリアとの調和も考えたおしゃれな手すりにしたいな。